
寄付する資格
国際ロータリー第2580 地区
2024-25 年度ガバナー
石川 彌八郎

これは、かつて福生警察署の署長をされた方から頂いたお手紙の内容です。
その文章は「蛍の季節は、私を慙愧の念に堪えない思いをさせる季節でもある」との書き出しで始まっている。
その文章は「蛍の季節は、私を慙愧の念に堪えない思いをさせる季節でもある」との書き出しで始まっている。
福生では毎年六月に「ほたる祭り」が開催される。同日、管内安全協会傘下の「安全管理部会」の総会が開催され、元署長はそれに出席した。総会終了後、同部会の会長から誘いを受けた。ほたる祭りは警備課長以下署員が対応しているため、特段懸念材料もなかったため、それに応じ、福生駅前の小ぶりなスナックで、警察懇話会の運営等について意見を聞かれたとのことだ。
午後八時を回ったころ、店に入ってきた客の一人が「羽村街道にパトカーがいっぱい出ている。」と興奮気味に話をしていたのを聞き、あわてて公舎に電話をしたところ、「二時間も前からポケベルを鳴らしていたのに、どこにいたの、早く署に電話をしてください」と奥さんからひどい剣幕で怒鳴られたとのことだ。
急ぎ現場に駆け付けたところ、重傷ひき逃げ事件が発生。被害者は小学生の女子、当時十歳。道路わきに落ちていた、金魚が一匹入れられた小さなビニール袋が今でも目に焼き付いているとのことでした。残念ながら、犯人の早期検挙はできぬまま翌未明、少女は死亡したという最悪の結末となってしまったのです。
少女は当日、父親(六十四歳)と二人でほたる祭りに出かけ、帰宅途中で輪禍に遭遇したもので、お父さんは五十代半ばでようやく授かった一人娘を目の前で失い、憔悴しきっていたとのことだ。
午後八時を回ったころ、店に入ってきた客の一人が「羽村街道にパトカーがいっぱい出ている。」と興奮気味に話をしていたのを聞き、あわてて公舎に電話をしたところ、「二時間も前からポケベルを鳴らしていたのに、どこにいたの、早く署に電話をしてください」と奥さんからひどい剣幕で怒鳴られたとのことだ。
急ぎ現場に駆け付けたところ、重傷ひき逃げ事件が発生。被害者は小学生の女子、当時十歳。道路わきに落ちていた、金魚が一匹入れられた小さなビニール袋が今でも目に焼き付いているとのことでした。残念ながら、犯人の早期検挙はできぬまま翌未明、少女は死亡したという最悪の結末となってしまったのです。
少女は当日、父親(六十四歳)と二人でほたる祭りに出かけ、帰宅途中で輪禍に遭遇したもので、お父さんは五十代半ばでようやく授かった一人娘を目の前で失い、憔悴しきっていたとのことだ。
ひき逃げは、死亡重傷事故であっても、事故それ自体は過失で、加害者と被害者の接点は一瞬しかなく、動機も計画性もない。結果が重傷や死亡であっても世間一般が寄せる関心の地域的範囲は狭く、事件捜査は一週間か十日がヤマ場とされているそうだ。一か月が経過しても犯人検挙のめどが立たず、穏やかならぬ心境のまま、署長は転勤になった。転勤先は地方であったが、上京の折には、遺影に焼香をしていたとのことだ。その三年後、三代後の福生署長から電話があった。彼は採用も同期で、個人的にも親しい関係にあったとのこと。「お前さんが取り逃がしたひき逃げ犯人を、捕まえてやったぞ」との連絡だった。我を忘れて、飛びあがらんばかりの喜びようであったと、周囲の警務課員は言っていたそうだ。元署長は僕の父とも懇意で、父が亡くなったことを知り、この手紙を頂いた次第です。その手紙の最後に、生前父が語っていたレイモンド・チャンドラーの「強くなければ生きていけない。やさしくなければ生きている資格がない」の言葉が忘れられないと書かれていた。
続きはこちらを押してください
ガバナー月信の全文はこちら